「給与明細の天引き、ちゃんと説明できますか?」——社会保険料の計算と手続き、人事・経理が押さえるべき実務のポイントを整理します

人事労務

みなさんこんにちは! バンスです! 日頃から仕事で経理、人事や介護事業に携わっています。日頃の業務の中で疑問や問題に直面した時に深堀した内容についてみなさんに共有できればと思い発信しています。是非参考にして下さい!


導入

「新入社員から『この天引きって何ですか?』と聞かれて、うまく説明できなかった……」

「パートさんが今年から社会保険に加入することになったんだけど、どう計算すればいいんだっけ?そもそも対象だっけ?」

「産休に入る社員がいるんだが、社会保険料はどうなるの?」

給与計算を担当していれば、誰でも一度はこういった場面に遭遇します。社会保険は私たちの生活に直結する制度ですが、「なんとなく処理している」という実務担当者も実は少なくありません。

今回は、社会保険料の基本的な仕組みから計算の具体的なポイント、2026年の最新制度変更までを、私自身の現場経験も交えてまとめます。「何がどうなっているか」を一度整理しておくと、従業員への説明もミスの防止も格段にやりやすくなります。



社会保険料の全体像——5種類の保険を一気に整理する

「社会保険」と一口に言っても、実務で扱うのは以下の5種類です。それぞれ対象者と負担割合が異なります。

種類主な給付内容対象会社負担従業員負担
健康保険医療費軽減・傷病手当金・出産手当金要件を満たす従業員50%50%
厚生年金保険老齢・障害・遺族年金70歳未満の従業員50%50%
介護保険介護サービスの費用補助40〜64歳の従業員50%50%
雇用保険失業給付・育児休業給付等週20時間以上・31日以上雇用見込み多め少なめ
労災保険業務・通勤中の事故補償全従業員(役員除く)100%なし

ポイントは2つです。

**健康・厚生年金・介護保険は「労使折半」**で、会社と従業員が50%ずつ負担します。一方、労災保険は全額会社負担で従業員の負担はゼロ。雇用保険は会社の負担がやや多く設定されています。

また、保険ではありませんが「子ども・子育て拠出金」も会社が全額負担します(後述)。


保険料はどう計算するか——「標準報酬月額」の仕組みを理解する

健康保険・厚生年金・介護保険の計算では、毎月の実際の給与をそのまま使うのではなく、「標準報酬月額」という等級表に当てはめた金額を使います。

計算式:標準報酬月額 × 保険料率 = 保険料(これを会社と従業員で折半)

標準報酬月額に含まれる報酬

基本給だけでなく、**残業手当・役職手当・家族手当・通勤手当(交通費)**も対象に含まれます。一方、見舞金・慶弔金・出張旅費は対象外です。

決まるタイミング(定時決定)

毎年4月・5月・6月の3か月間の報酬の平均をもとに標準報酬月額が決まり、その年の9月から翌年8月までの1年間適用されます。これを「算定基礎届(定時決定)」といいます。

年度中に変わるケース(随時改定)

昇給や降給などで固定的賃金が変わり、変動後3か月の平均が現在の等級と2等級以上の差が生じた場合は、年度途中でも改定が行われます(月額変更届)。

賞与の扱い

賞与(ボーナス)からも同じ料率で社会保険料が天引きされます。ただし上限額が設定されており、健康保険は年度累計573万円、厚生年金は月間150万円を超える部分は対象外です。


4〜6月の残業が1年間の保険料を変える

定時決定のルールで、4・5・6月の報酬平均が9月以降1年間の保険料を決めます。この期間に残業が多くなると標準報酬月額の等級が上がり、翌年8月まで保険料が高くなります。

従業員の手取りを守るという観点でも、また会社の法定福利費を抑えるという観点でも、この時期の残業管理は実務上の重要ポイントです。


【最新】106万円の壁——2024年10月からの適用拡大で何が変わったか

パートやアルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する義務が生じる基準が「106万円の壁」です。

加入が義務付けられる5つの条件(すべて満たす場合)

No.条件
週の所定労働時間が20時間以上
月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円)
2か月を超える雇用の見込みがある
学生ではない(夜間・定時制・休学者等を除く)
勤務先の従業員数が一定規模以上

対象企業規模の変遷

時期対象
2022年10月〜従業員101人以上の企業
2024年10月〜従業員51人以上の企業(拡大)

**51〜100人規模の会社はここで初めて対象になりました。**この変更に対応できているか、今一度確認してください。

「8.8万円」に含まれない手当に注意

残業代・賞与・通勤手当・家族手当・精皆勤手当など臨時的な手当は、この8.8万円の判定から除外されます。基本給と固定的な諸手当の合計で判断します。


【最新】2026年4月開始・子ども・子育て支援金とは

少子化対策の財源として、2026年(令和8年)4月分から「子ども・子育て支援金」の徴収が始まりました。

項目内容
全体の保険料率0.23%
負担割合会社と従業員で折半(各0.115%)
徴収方法健康保険料に併せて徴収

給与・賞与の双方に適用されます。金額は小さいですが、給与計算システムの設定に反映されているかの確認が必要です。


保険料免除の「落とし穴」——産休・育休と病欠は別物

「休業中は保険料がかからない」と思っている従業員は多いのですが、これは産前産後休業・育児休業に限った話です。

免除されるケース

休業の種類免除の内容
産前産後休業健康保険・介護保険・厚生年金の本人・会社負担分ともに免除
育児休業(3歳未満)同上
産後パパ育休要件を満たせば同上

将来の年金計算上も「納付済み」として扱われるため、従業員に不利益はありません。

免除されないケース

**病気・ケガによる私傷病の休業(病欠)では社会保険料は免除されません。**給与が支払われない期間であっても保険料は発生し続けます。会社が立て替えて後日精算するなどの対応が必要になります。

⚠️ 重要:免除は自動ではない

産休・育休中の保険料免除は、事業主(会社)が年金事務所へ申し出を行わないと適用されません。申請を忘れると、保険料が引き続き徴収されてしまいます。


実務・会計処理のポイント

納付期限

健康保険・厚生年金は、当月分を翌月末日までに納付します。雇用・労災保険(労働保険)は年1回(6〜7月)にまとめて前年分の精算と当年分の概算を申告・納付します。

勘定科目

区分勘定科目
会社負担分法定福利費
従業員から天引きした分預り金

発生主義の原則から、例えば5月分の保険料(6月納付)は5月の決算で「未払費用」として計上するのが一般的です。

間違えやすい実務ルール4点

月またぎのルール(日割りなし) 社会保険料に日割りはありません。月の途中で入社しても1か月分が徴収されます。

退職月のルール 退職日の翌日(資格喪失日)が属する月の「前月分まで」が納付対象です。ただし月末退職の場合はその月分まで徴収が必要になるため注意が必要です。

年齢の壁

  • 40歳:誕生日の前日が含まれる月から介護保険料の徴収が始まります
  • 65歳:介護保険料の徴収が会社から市区町村に移ります
  • 70歳:厚生年金保険の被保険者資格を喪失します

国保との二重徴収に注意 新入社員が前職後に国民健康保険に加入していた場合、本人が国保の脱退手続きをしないと二重徴収になります。入社時に必ずアナウンスしてください。


まとめ

社会保険料の実務を一言で整理すると、**「5種類の保険を正確に把握し、標準報酬月額ベースで計算し、免除・期限の落とし穴を潰しておく」**これに尽きます。

特に今年から実務に影響するポイントは3つです。

① 2024年10月から51人以上の企業が106万円の壁の対象に。自社の規模を再確認を。 ② 2026年4月から子ども・子育て支援金(0.115%)の徴収が始まった。給与システムの設定変更を確認。 ③ 産休・育休の免除は会社の申請が必要。病欠は免除されない。この違いを従業員に正確に伝える。

制度は毎年少しずつ変わりますが、仕組みの骨格を押さえておけば対応は難しくありません。引き続き実務で気づいた点があれば、このブログで共有していきます。

是非参考にして下さい!


本記事は2026年6月時点の情報を基に作成しています。保険料率の最新情報は、全国健康保険協会(協会けんぽ)・日本年金機構のウェブサイトでご確認ください。

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