「健診を受けさせて終わり」では済まない——企業に課せられた5つの法的義務と、2027年4月からの大改正を整理します

人事労務

みなさんこんにちは! バンスです!

日頃から仕事で経理、人事や介護事業に携わっています。日頃の業務の中で疑問や問題に直面した時に深堀した内容についてみなさんに共有できればと思い発信しています。是非参考にして下さい!


導入

「毎年健診の案内をして、受けさせて……それで終わり、でいいんじゃないの?」

そう思っている総務・人事担当者の方は、実は少なくありません。

しかし労働安全衛生法の観点からすると、健診は「受けさせたら終わり」ではなく、そこからが本番です。 結果を受け取った後に、企業としてどう動くか——そこまでが一連の「義務」としてセットになっています。

さらに、2027年(令和9年)4月には、健診項目そのものが大幅に改定される予定です。準備は早いに越したことはありません。 今回は、企業が押さえておくべき健康診断の法的義務と、迫りくる制度改定の内容を実務目線で整理しました。

そもそも「健康診断の実施義務」とは

労働安全衛生法により、企業(事業者)は従業員に対して健康診断を実施する義務を負っています。そして従業員も健康診断を受ける義務を負っています。

主な実施パターンと頻度は以下の通りです。

種類対象実施タイミング
雇入時健康診断新たに雇い入れる常時使用労働者採用時
定期健康診断常時使用する全労働者1年以内ごとに1回
特定業務従事者健診深夜業など特定業務に従事する労働者配置換え時 + 6ヶ月ごとに1回

ポイント: 費用は企業負担が原則です。法令で義務付けられている以上、「自己負担で受けてきてください」は認められません。


対象者は誰?——「常時使用する労働者」の定義

「正社員だけが対象」と思っていませんか? 実はパート・アルバイトも条件次第で対象になります。

  • 正社員 → 義務あり
  • パート・アルバイト → ①1年以上の雇用見込みがあり、②週の労働時間が正社員の3/4以上、の両方を満たせば義務あり(1/2以上3/4未満の場合は「望ましい」)
  • 派遣社員 → 一般健康診断は派遣元が実施。特殊健康診断は**派遣先(貴社)**が実施

注意: 役員(代表取締役など)は法的義務の対象外ですが、健康管理の観点から受診が強く推奨されます。


健診の種類:3つのカテゴリを押さえる

職場の健康診断には大きく3種類あり、それぞれで実施頻度や報告義務が異なります。

一般健康診断(定期健診)

全労働者が対象。1年に1回実施します。 必須11項目は、問診・身体測定・胸部X線・血圧・貧血・肝機能・血中脂質・血糖・尿検査・心電図等です。

なお、年齢によって一部項目の省略ルールがあります。

重要: 雇入時健康診断では、年齢に関わらず全11項目の省略は一切認められません。

特定業務従事者の健康診断

深夜業(22時〜5時)や高熱・放射線・粉じんなど、一定の危険・有害業務に従事する労働者が対象。 配置換え時と6ヶ月ごとに1回実施します。診断項目は一般健診と同様(胸部X線等は年1回で可)。

特殊健康診断

有機溶剤・鉛・石綿・電離放射線など、法令で定められた有害因子にさらされる業務が対象。 6ヶ月ごとに1回実施し、業務ごとに専用の検査項目が設定されています。 石綿健診の記録保存は30〜40年と、一般健診より格段に長い点に注意が必要です。


企業に課せられた5つの法的義務

健診はゴールではなく、スタートです。実施後に企業がやらなければならないことを整理します。

義務① 実施義務

年1回以上(特定業務・特殊は6ヶ月ごと)、確実に実施すること。未受診者への個別フォローも含めた運用体制が求められます。

義務② 費用の全額負担

法定の健康診断費用はすべて会社負担です。従業員に負担させることはできません。

義務③ 記録の保存と本人への通知

  • 受診した全員に結果を通知しなければなりません(所見なしの場合も同様)
  • 健康診断個人票を作成し、5年間保存する義務があります
  • 健康情報は機微な個人情報です。閲覧できるのは産業医・保健師、人事担当者(安全配慮義務の履行目的)に限られます

義務④ 医師の意見聴取と事後措置

異常所見があった場合、就業上の措置について医師の意見を聴くことが必須です。その上で必要に応じて次の措置を実施します。

  • 就業場所の変更
  • 作業の転換
  • 労働時間の短縮・深夜業の回数減少

最終的な判断は、医師の意見を尊重しつつ事業者が決定・実施する義務があります。

義務⑤ 労働基準監督署への報告

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、定期健康診断の結果報告書を遅滞なく所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。

例外(重要): 特殊健康診断(石綿・有機溶剤・特定化学物質等)については、従業員が50人未満の事業場であっても、全事業者に報告義務があります


事後措置フロー:総務が結果を受け取ってからやること

「結果が届いた後、何をすればいいのか」——これが実務で最も迷うポイントです。

流れを整理すると次のようになります。

医師の意見に基づく就業区分は3種類です。

区分内容
通常勤務通常の勤務で問題なし
就業制限労働時間短縮・深夜業減少・作業転換など負荷を軽減
要休業勤務を休ませ、療養に専念させる必要がある

なお、脳・心臓疾患のリスクが高いと判断された場合は、労災保険の**「二次健康診断等給付」**(受診者負担なし)の対象となる場合があります。


受診時間中の賃金はどうなる?

よくある疑問として「健診を受けている時間は勤務時間扱いにしないといけないの?」という点があります。

結論は次の通りです。

  • 法的義務:なし(労使の協議に委ねられる)
  • 行政の立場:「勤務時間扱いとすることが望ましい」(厚生労働省見解)

社外の医療機関で受診する場合の移動時間も同様の考え方が適用されます。受診率を上げるためにも、就業規則で「勤務時間扱いとする」と明記しておくことを推奨します。

ただし、特殊健康診断の受診時間は業務と密接に関連するため、賃金支払いが必要な勤務時間と解釈されるのが通例です。この点は一般健診と混同しないよう注意が必要です。


2026年〜2027年の法改正タイムライン

今後の法改正で、実務に影響が出る変更が2段階で予定されています。

2026年(令和8年)8月〜

産業医の辞任・解任時の報告義務化

産業医が辞任または解任された場合、その理由等を含めて所轄の労働基準監督署へ報告することが義務付けられます。

2027年(令和9年)4月〜 ※施行予定

一般健康診断の検査項目が大幅改定!

慢性腎臓病(CKD)対策の強化などを目的として、以下の変更が予定されています。

変更内容詳細
【追加】血清クレアチニン検査40歳以上の労働者に原則必須化(腎機能評価のため)
【削除】喀痰(かくたん)検査早期発見への有効性が限定的として廃止
【名称変更】肝機能検査GOT→AST、GPT→ALT、γ-GTP→γ-GT(国際基準に統一)

Action Needed 健診費用の増加(クレアチニン検査の追加)、健康管理システムや就業規則の改修が必要になる可能性があります。今から予算化・準備を進めることをお勧めします。


まとめ:チェックリストで抜け漏れを防ごう

最後に、総務担当者のための年間アクションチェックリストをまとめます。


今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。 ご意見・ご質問はコメント欄やお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました