「任意継続と国保、結局どっちが得なの?」——定年退職・離職時の公的医療保険&年金制度ガイド

お金の知識

みなさんこんにちは! バンスです! 日頃から仕事で経理、人事や介護事業に携わっています。日頃の業務の中で疑問や問題に直面した時に深堀した内容についてみなさんに共有できればと思い発信しています。是非参考にして下さい!


「定年になったら、健康保険はそのまま任意継続すればいいんですよね?」

「国保にした方が安いって聞いたけど、うちの場合はどうなんだろう……」

「妻が59歳なんですが、年金の手続きって必要ですか?」

定年退職や離職のタイミングで、総務担当者も本人も必ずぶつかるのが「健康保険」と「年金」の切り替え問題です。しかも手続き期限は14日〜20日と非常に短く、しかも「任意継続」「国民健康保険」のどちらが得かは、所得や世帯構成によって答えが変わります。

さらに見落としがちなのが、配偶者が60歳未満の場合の年金の扶養(第3号被保険者)の扱い。「健康保険は任意継続にしたから安心」と思っていたら、実は年金の方で思わぬ負担が発生していた、というケースも珍しくありません。

今回は、退職後に必要な「2つの切り替え」(医療保険・年金)の全体像から、任意継続と国保の保険料試算方法、大分市を例にした損益分岐点、2年目に向けた切り替え戦略までを一本にまとめます。「退職予定者本人」と「実務サポートを行う総務担当者」の両方に向けた内容です。

退職後に必要な「2つ」の切り替え

退職日の翌日から、以下の2種類の公的制度について切り替えが必要になります。

制度選択肢手続き窓口
公的医療保険家族の扶養/任意継続/国民健康保険家族の勤務先/在職時の会社(協会けんぽ等)/市区町村
公的年金国民年金(第1号)への加入/家族の扶養(第3号)への移行市区町村・年金事務所/配偶者の勤務先

「医療保険」と「年金」は別々の手続きです。特に配偶者が60歳未満の場合、医療保険の選択とは関係なく年金の手続きが必要になる点に注意してください(詳細は後述)。


選択肢①:家族の「扶養」に入る(最も負担が少ない)

条件を満たせば保険料は0円になる、もっとも負担が少ない選択肢です。

  • 条件: 年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)かつ、被保険者(家族)の年収の2分の1未満であること
  • 範囲: 健康保険の扶養に入れば、追加の保険料なしで医療を受けられます
  • 年金: 配偶者の扶養に入る場合、60歳未満であれば国民年金第3号被保険者となり、年金保険料もかかりません

年金受給が始まっている方や、再雇用で一定の収入がある方は収入要件を満たさないケースが多いため、次の「任意継続」「国民健康保険」との比較が実務上のメインテーマになります。


選択肢②:健康保険の「任意継続」

今の会社の健康保険に、退職後も最長2年間、個人で加入し続ける制度です。

  • 加入条件: 退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること
  • 申請期限: 退職日の翌日から20日以内(必着)
  • メリット: 扶養家族が何人いても保険料は変わりません

保険料の計算方法

在職時の「約2倍」が目安ですが、上限があります。

計算式: 標準報酬月額 × 保険料率

標準報酬月額は、以下のいずれか低い方が適用されます。

  1. 退職時の標準報酬月額
  2. 全被保険者の平均標準報酬月額(協会けんぽの場合、令和8年度は32万円

例:月給50万円で退職しても、32万円を基礎に計算されるため、在職時の所得が高かった人ほど国保より割安になる傾向があります。

40歳以上65歳未満の場合は介護保険料も加算される点、扶養家族の人数に関わらず保険料が変わらない点も押さえておきたいポイントです。


選択肢③:国民健康保険(国保)

市区町村が運営し、前年の所得に基づいて保険料が決まる制度です。

  • 加入手続き: 退職日の翌日から14日以内に役所で行います
  • 注意点: 「扶養」という概念がありません。家族がいれば、その人数分の保険料(均等割)がすべて合算して請求されます

保険料の計算方法

一般的に以下の項目の合計で算出されます(自治体により異なります)。
前年の所得の確認方法: お手元にある**源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」**という欄を見ることで、この控除が引かれた後の数字を確認できます

項目内容
所得割(前年の所得 - 43万円の基礎控除)× 所得割率
均等割均等割額 × 加入人数(扶養家族も1名としてカウント)
平等割1世帯あたりにかかる固定額
資産割固定資産等に応じてかかる(大分市など一部自治体はなし)

年金受給者の所得計算: 年金収入から「公的年金等控除」を差し引いた「雑所得」が算定基準になります。

  • 65歳未満:控除額72.5万円
  • 65歳以上:控除額110万円

例:65歳未満で年金収入が180万円の場合、雑所得は107.5万円(180万-72.5万)。ここからさらに基礎控除43万円を引いた額に所得割率がかかります。

前年の所得が高かった退職1年目は保険料が高額になりやすい傾向があります。

知っておきたい軽減制度

条件を満たせば、所得を大幅に低く見積もって計算してくれる軽減制度があります。

① 非自発的失業者の軽減

倒産・解雇・雇い止め等で離職した65歳未満の方が対象です。

  • 所得割の計算時、本人の給与所得を**30/100(7割減)**として計算
  • 雇用保険受給資格者証(離職理由コード11, 12, 21, 22, 31, 32, 23, 33, 34など)を持参し、役所窓口で申請が必要(自動適用ではありません)

② 法定軽減

世帯所得が一定基準以下なら、均等割・平等割などの固定分が7割・5割・2割軽減されます。収入がゼロでも所得申告をしないと適用されないため、無職・低所得の場合は必ず役所へ申告してください。


【事例】大分市における任意継続と国保の損益分岐点

「60歳男性(本人)と59歳の妻」が大分市に居住しているケースで試算すると、任意継続と国保の分岐点となる所得(総所得金額等)は約2,597,000円です。https://www.city.oita.oita.jp/o052/kurashi/kokumin/1193625759256.html

所得水準有利な制度理由
所得260万円超任意継続保険料に上限があるため
所得260万円以下国民健康保険所得割の負担が軽くなるため
非自発的失業者に該当国民健康保険(大半のケース)所得を30/100とみなす軽減措置により、所得が約865万円以下なら国保が有利

参考:大分市・令和8年度の保険料の内訳

  • 任意継続:月額37,440円(医療保険10.08%+介護保険1.62%)、年間449,280円(扶養家族の追加保険料なし)
  • 国保:所得割(所得-43万円)×14.15%+均等割・平等割142,600円(2名世帯)

自治体によって税率・軽減額は異なるため、最終判断の前に窓口での試算依頼が必須です。


【重要】配偶者(59歳以下)の年金負担に注意

見落としやすいポイントですが、医療保険を任意継続にしても、年金の扶養(第3号被保険者)からは外れます。

在職中退職後(任意継続)
夫の医療夫の社会保険料でカバー任意継続保険料(自己負担)
妻の年金夫の社会保険料でカバー(第3号)妻自身が第1号として納付
  • 配偶者が60歳未満であれば、退職と同時に第3号被保険者ではいられなくなり、第1号被保険者への種別変更が必要
  • 手続き期限: 退職から14日以内に役所等で種別変更
  • 保険料: 令和8年度の国民年金保険料は月額17,510円

配偶者が60歳になるまでの期間、この出費を家計に組み込んでおくことが大切です。


60歳定年退職時の年金手続きまとめ

  • 国民年金の強制加入期間は「20歳以上60歳未満(誕生日の前月まで)」のため、本人(60歳)は国民年金への加入は原則不要
  • 年金額を増やしたい場合、65歳までの「任意加入」は可能(あくまで任意)
  • 配偶者が60歳未満の場合のみ、上記の第1号への種別変更手続きが必要(退職から14日以内)
  • 60歳以上ですでに年金を受給している場合でも、健康保険の手続きは別途必要

マイナ保険証利用時の返却物の注意点

マイナ保険証を利用している場合でも、以下は返却・回収の対象です。

対象物対応理由
健康保険被保険者証(紙・プラスチック)返却必要資格喪失後の不正使用防止のため法律で義務付け
資格確認書回収対象同上。事業主が速やかに回収
マイナンバーカード本体返却不要本人確認書類であり、保険証とは別物。そのまま使用継続

紛失した場合は「被保険者証回収不能届」の提出が必要です。返却すべきは「保険証」であり「マイナンバーカード」ではない点に注意してください。


2年目に向けた賢い切り替え戦略

1年目は任意継続、2年目に国保へ移るのが最も安くなるケースが多いです。

  • 理由: 国保は「前年所得」で決まるため、1年目(現役時代の高い所得が反映)は高くなりがちですが、2年目は「退職後の低い所得」が反映されて安くなる
  • 任意脱退: 2022年の法改正により、2年を待たずとも「任意継続被保険者資格喪失申出書」の提出(任意脱退の申出)によって、任意継続を辞めることが可能

切り替えの実務手順

  1. 加入している協会けんぽ・健康保険組合へ「任意継続被保険者資格喪失申出書」を提出
  2. 申出が受理された月の翌月1日に任意継続の資格喪失
  3. 喪失日から14日以内に市区町村の国保窓口で加入手続き(健康保険資格喪失証明書、本人確認書類等が必要)
  4. 資格喪失後は保険証を速やかに返却

なお、確定申告で1年目に支払った任意継続の保険料を「社会保険料控除」として申請すれば、所得税・住民税の軽減にもつながります(国保料自体の所得割には影響しません)。


手続きスケジュール一覧

タイミング手続き内容
退職日健康保険証を会社へ返却(家族分含む)
退職翌日〜14日以内国民健康保険・国民年金(配偶者の種別変更含む)の加入手続き(役所)
退職翌日〜20日以内任意継続の申請書提出(協会けんぽ等)

期限が短いため、退職前からの準備が欠かせません。


総務担当者・退職予定者へのチェックリスト

総務担当者の方へ

  • □ 退職予定者へ「任意継続20日以内・国保14日以内」の期限を早めに案内した
  • □ 標準報酬月額(協会けんぽ令和8年度上限32万円)を踏まえた任意継続保険料の目安を伝えた
  • □ 配偶者が60歳未満の場合の年金第3号→第1号の手続きについて案内した
  • □ 健康保険証・資格確認書の回収フローを確認した(マイナンバーカードは対象外)

退職予定者の方へ

  • □ 退職時の給与明細で自分の「標準報酬月額」を確認した
  • □ 市区町村窓口で、退職後の見込み所得を伝えて国保料の試算を依頼した
  • □ 任意継続の上限額と国保の試算額を比較した
  • □ 非自発的離職に該当する場合、雇用保険受給資格者証を持参して軽減申請の可否を確認した
  • □ 配偶者が59歳以下の場合、年金保険料(月額17,510円)を家計の支出として予定した

まとめ

退職後の公的医療保険・年金の選択を一言で整理すると、「所得水準」と「配偶者の年齢」の2つを押さえれば、迷わず判断できるということです。

特に押さえておきたいポイントは3つです。

① 任意継続と国保、どちらが安いかは所得水準で決まる(大分市の例では所得約260万円が分岐点)。非自発的失業者は軽減措置により国保が圧倒的に有利になりやすい。

② 配偶者が60歳未満の場合、医療保険を任意継続にしても年金の第3号からは外れる。第1号への種別変更(月額17,510円)を忘れずに。

③ 1年目は任意継続、2年目に国保へ切り替える「2段階戦略」が有利になるケースが多い。2022年の法改正で「任意脱退」により2年を待たず切り替え可能。

制度を「知っている」だけでは、数万円単位の払い過ぎを防げません。退職前に窓口で試算を依頼し、期限内に判断することが何より重要です。

是非参考にして下さい!


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※ 本記事は令和8年度時点の情報を基に作成しています。保険料率・控除額は自治体・年度により変動するため、正確な金額は加入する健康保険組合・協会けんぽ支部、お住まいの市区町村窓口でご確認ください。

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