みなさんこんにちは! バンスです! 日頃から仕事で経理、人事や介護事業に携わっています。日頃の業務の中で疑問や問題に直面した時に深堀した内容についてみなさんに共有できればと思い発信しています。是非参考にして下さい!
「雇用保険って、会社を辞めた時にもらう失業手当のことですよね?」
「育休中の従業員から給付金の相談を受けたけど、正直、退職者の基本手当と何が違うのか自信がないです……」
「うちの会社、育児も介護も定年再雇用者もいるのに、雇用保険の給付メニューを全部把握できている自信がありません」
雇用保険は、実は**「失業した時だけの保険」ではありません。** 育児、介護、学び直し、そして定年後の再雇用まで、従業員のライフイベント全体を支える給付メニューが、全部で9種類も用意されています。
しかも2025年(令和7年)から2028年にかけて、給付制限の短縮、新給付金の創設、支給率の縮小など、制度が段階的に大きく変わっている真っ最中です。従業員から相談を受ける立場の総務・人事担当者にとっては、「どの給付が」「誰に」「いつまでに」使えるのかを一枚の地図として持っておくことが欠かせません。
今回は、雇用保険の全9給付メニューを「従業員のライフイベント」を軸に整理し、2025〜2028年の法改正ポイントとあわせて総まとめします。すでに個別のテーマで詳しく解説した記事(高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付など)もありますので、今回は「全体の地図」として、そこに載っていない再就職手当や教育訓練休暇給付金なども含めて一本化しました。
全体像:ライフイベント別・給付メニュー早見表
まずは「誰が」「どんな時に」使える制度なのか、全体像を一覧表で押さえておきましょう。
| 対象となる方 | 給付メニュー | 新設・改正 |
|---|---|---|
| 仕事を辞めて次を探す方 | ① 基本手当(失業手当) | 2025年4月:給付制限が2ヶ月→1ヶ月に短縮 |
| 早く再就職が決まった方 | ② 再就職手当/⑧ 就業促進定着手当 | 2025年4月:定着手当の上限額が半減 |
| 定年後も働き続けたい方 | ③ 高年齢雇用継続基本給付金/④ 高年齢再就職給付金 | 2025年4月:支給率上限が15%→10%に縮小 |
| 育児と仕事を両立したい方 | ⑤ 育児休業給付金(出生後休業支援給付金含む)/⑥ 育児時短就業給付金 | 2025年4月:出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金を新設 |
| 学び直し(リスキリング)をしたい在職者 | ⑦ 教育訓練休暇給付金 | 2025年10月新設 |
| 季節雇用で働く方 | ⑨ 特例一時金 | ー |
このように、雇用保険は「辞める前」「辞める時」「辞めた後」のすべての局面に対応した設計になっています。次章で、2025〜2028年の改正スケジュール全体を時系列で確認しておきましょう。
2025〜2028年 制度改正ロードマップ
雇用保険法・育児介護休業法の改正は、次のようなスケジュールで段階的に進んでいます。社内規定の整備や周知のタイミングを計画する際の目安にしてください。
| 施行時期 | 主な改正内容 |
|---|---|
| 2025年4月〜 | 自己都合退職の給付制限が原則1ヶ月に短縮/高年齢雇用継続給付の支給率上限が10%に縮小/育児時短就業給付・出生後休業支援給付金の創設 |
| 2025年10月〜 | リスキリングを無給休暇で支援する「教育訓練休暇給付金」の創設 |
| 2026年4月〜 | 在職老齢年金の支給停止基準額が「51万円→62万円」へ大幅引き上げ(就労抑制の解消) |
| 2028年10月〜 | 雇用保険の適用拡大(週の所定労働時間「10時間以上」の労働者も加入対象へ) |
特に2026年4月の在職老齢年金の基準額引き上げは、定年後再雇用の賃金設計そのものに影響する大きな改正です。この点は後述の「高年齢雇用継続給付」の章、および過去記事でも詳しく扱っています。

【辞める時】基本手当(失業手当)の基本
雇用保険と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのが、この基本手当です。「就職する意思と能力があるのに、職業に就けない状態」であることが前提となる給付で、離職理由によって必要な被保険者期間が異なります。
| 離職理由のタイプ | 必要な被保険者期間 |
|---|---|
| 自己都合など(原則) | 離職前2年間に通算12ヶ月以上 |
| 倒産・解雇・パワハラ等(特定受給資格者) | 離職前1年間に通算6ヶ月以上 |
【2025年4月改正】自己都合退職の給付制限が短縮
自己都合退職の場合、これまで「2ヶ月」だった給付制限期間が、原則**「1ヶ月」**に短縮されました。ただし、5年以内に3回以上自己都合退職を繰り返している場合は、従来どおり3ヶ月の制限が適用される点に注意が必要です。
さらに、離職期間中または離職日前1年以内に自ら教育訓練(リスキリング)を受講した場合、この給付制限が即時に解除される新ルールも導入されています。
支給額の目安と年齢による上限
支給額は「賃金日額(離職前6ヶ月の給与総額÷180)× 給付率(45%〜80%)」で計算され、年齢に応じた上限額が設定されています(令和9年7月31日までの基準)。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 60歳未満 | 6,745円 |
| 60歳以上65歳未満 | 5,454円 |
定年退職期(60〜65歳未満)は上限額が低く設定されているため、現役時代の収入が高かった方ほど、月額換算の受給目安が抑えられる仕組みになっている点は、従業員への説明時に誤解が生まれやすいポイントです。
定年退職後に「すぐ働かず休養したい」場合は、離職日の翌日から2ヶ月以内に受給期間の延長申請(最大1年)をすることで、休養後に基本手当の手続きを行うことも可能です。65歳未満での受給には、老齢厚生年金との併給調整(60〜64歳は年金が全額支給停止)という重要なルールもあわせて押さえておく必要があります。

【早く決まったら】再就職手当・就業促進定着手当
基本手当を長くもらうより、早期に再就職して一時金を受け取る方が、結果的に手取りが多くなるケースも珍しくありません。
再就職手当
基本手当の受給手続き後、7日間の待期期間を満了してから安定した職業に就いた場合に支給される一時金です。支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていること、1年を超えて勤務することが確実であることなどが要件です。
| 基本手当の支給残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定日数の3分の2以上残し | 70% |
| 所定日数の3分の1以上残し | 60% |
計算式は「基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率」。早く再就職を決めるほど給付率が高くなる設計です。申請期限は再就職した日の翌日から1ヶ月以内なので、対象者には早めの案内が必要です。
なお、再就職手当を受給すると高年齢再就職給付金は受け取れません(重複受給不可)。どちらが有利かはハローワークで試算・選択する必要があります。
就業促進定着手当
再就職手当の支給を受けた方が、再就職先に6ヶ月以上雇用され、かつ賃金が離職前より低下している場合に支給される一時金です。
【2025年4月改正】 上限額の計算式が「基本手当日額×40%×支給残日数」から**「基本手当日額×20%×支給残日数」へ半減**しました。再就職後に賃金が下がった方への補填という制度趣旨は変わりませんが、実務上は「以前より上限が下がった」ことを前提に案内する必要があります。

【定年後も働き続ける】高年齢雇用継続給付・高年齢再就職給付金
60歳以降、賃金が下がった状態で働き続ける従業員を支える給付です。60歳到達時点の賃金と比べて各月の賃金が75%未満に低下した場合、低下率に応じて給付金が上乗せ支給されます。
| 60歳到達日 | 支給率の上限 |
|---|---|
| 2025年3月31日以前 | 最大15%(従来の支給率) |
| 2025年4月1日以降 | 最大10%(縮小適用) |
この給付金は将来的に段階的廃止が決定されており、支給率が異なる従業員が社内に混在する「二重運用」の期間にも注意が必要です。
また、2026年4月からの在職老齢年金の基準額引き上げ(51万円→62万円)により、「年金カットを恐れて賃金を抑える」という従来の賃金設計の前提が大きく変わりつつあります。この制度の詳しい仕組みと実務の急所、そして再雇用時の賃金戦略については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
高年齢雇用継続給付の仕組みと在職老齢年金との関係については、60歳からの「給料ダウン」を補う処方箋。高年齢雇用継続給付の仕組みと実務の急所 で詳しく整理しています。

【育児と両立】育児休業給付金・育児時短就業給付金
育児休業給付金と出生後休業支援給付金
原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した際に支給される給付金で、休業開始から180日目までは賃金日額の67%、それ以降は**50%**が支給されます。
【2025年4月創設】出生後休業支援給付金では、子の出生直後に夫婦が一定条件で育休(上限28日間)を取得した場合、賃金の13%が上乗せされ、社会保険料免除とあわせて実質的に手取り10割が補償される設計になりました。男性の育休取得をさらに後押しする内容です。
育児休業給付金の受給要件や申請フローの詳細は、以下の記事で解説しています。
育児休業給付金の受給要件・申請の流れについては、「育休中って、お金はどうなるの?」——2025年施行 育児休業制度と給付金申請の完全ガイド をご確認ください。
育児時短就業給付金(2025年4月創設)
2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている被保険者が対象で、時短勤務中の各月の賃金の10%相当額が支給される新しい給付金です。育休復帰後、フルタイム勤務ではなく時短勤務を選んだ従業員の収入減少をカバーし、早期復帰や離職防止を狙った制度です。
支給対象月の賃金額が支給限度額(47万1,393円)未満であり、算出された給付額が2,411円を超えることが要件となります。就業規則に短時間勤務に関する規定を整備しておくことも、あわせて推奨されています。
なお、介護と仕事の両立を支える介護休業給付金(休業開始時賃金日額の67%)についても、育児休業給付金と考え方は共通しています。
対象家族の範囲や「要介護状態」の判断基準、企業に課される新たな義務については、「介護休業を取れと言われても、何から始めれば……」——2025年4月改正対応 介護休業・介護休暇・給付金の完全ガイド で詳しく整理しています。

【学び直す】教育訓練休暇給付金(2025年10月新設)
在職中の被保険者が、主体的な教育訓練(リスキリング)を受けるために無給の休暇を取得した場合に支給される、これまでにない新しい給付金です。
- 支給額:基本手当と同等(賃金日額の約50%〜80%相当)
- 受給期間:被保険者期間に応じて90日〜150日間
- 申請サイクル:休暇の開始日から起算して30日ごとにハローワークへ申請
「会社を辞めなければ学べない」という前提を変える制度ですが、実務上の注意点として、この給付金を受給すると雇用保険の被保険者期間はリセットされ、一定期間は基本手当(失業給付)を原則受給できなくなります。制度を案内する際は、この点を必ずセットで伝える必要があります。
【季節雇用の方向け】特例一時金
短期雇用特例被保険者(季節雇用者等)が対象の給付で、離職前1年間に11日以上働いた月が通算6ヶ月以上あることなどが要件です。支給額は基本手当日額の30日分(当分の間、暫定措置として40日分)。離職日の翌日から6ヶ月以内という受給期限があり、これを過ぎると受給できなくなる点に注意が必要です。
総務担当者のための実務チェックリスト
最後に、雇用保険の給付メニュー全体を扱う総務・人事担当者向けに、実務上の急所をチェックリストとしてまとめます。
- □ 離職者が59歳以上の場合、本人の離職票発行希望の有無にかかわらず、ハローワークへの発行届出(離職証明書の添付)が必須であることを担当者間で共有した
- □ 自己都合退職の給付制限短縮(1ヶ月)と、教育訓練による制限解除の新ルールを社内案内フローに反映した
- □ 高年齢雇用継続給付は「各月の末日まで在籍していること」が要件のため、65歳到達月の退職日設定(月末か誕生日の前日か)による本人の不利益がないか確認する体制がある
- □ 育児時短就業給付金・出生後休業支援給付金の新設について、就業規則・育休関連規定を最新化した
- □ 教育訓練休暇給付金を利用する従業員には、「被保険者期間がリセットされる」リスクを事前に説明している
- □ 再就職手当・就業促進定着手当・高年齢再就職給付金は、それぞれ重複受給ができない関係にあることを理解し、従業員からの相談時に案内できる
- □ 2026年4月の在職老齢年金基準額引き上げを見据えて、定年後再雇用の賃金設計方針を見直す予定を立てている
まとめ
雇用保険は、「失業した時の保険」から、**従業員の人生の局面ごとに寄り添う「キャリア形成保険」**へと役割を広げています。
特に押さえておきたいポイントは3つです。
① 雇用保険には全部で9種類の給付メニューがあり、「辞める前」「辞める時」「辞めた後」のすべての局面をカバーしている。
② 2025年4月・10月、2026年4月と、制度は段階的に大きく変わっている最中。特に給付制限の短縮、支給率の縮小、新給付金の創設は、対象者ごとに影響が異なる。
③ 個別の制度の深掘りは既存記事に譲り、この記事は全体の「地図」として、どの給付が誰にとって使えるのかを判断する入口として活用してほしい。
制度の全体像を把握しておくことで、従業員からの相談にも「まずどの制度に該当しそうか」を即座に見立てられるようになります。是非参考にして下さい!
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※ 本記事は2025〜2026年時点の情報を基に作成しています。制度の詳細・最新情報は、厚生労働省のウェブサイトおよびお近くのハローワークでご確認ください。



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